地区行動指針「理念と実践 ~Think Next~」
2017年10月

ガバナーを拝命するに当たり、三大セミナーに向けて編纂いたしました冊子に、「2017-18年度地区運営方針」なる拙文を記しました。その文中、私は、地区運営に関する基本的な考え方として、①理念と実践、②事業と運営、③継続と革新の三つの観点からの考察を試みました。今月は、その内から、理念と実践についての私見を申し上げます。
かの決議23-34が採択される前夜は、職業倫理を重視し団体としての奉仕活動に対しては隠匿の美を是とする理念派と、金銭的奉仕や身体的奉仕といった具体的かつ実践的奉仕活動を是とする実践派が、その対立を深めていたと聞き及びます。ポール・ハリスによるロータリークラブの設立が1905年でありますので、設立から僅か18年目の出来事です。加えて、メルビン・ジョーンズによるライオンズクラブの設立が1917年でありますから、ロータリーは創立後の間もない頃から、この二つのスタンスの間に介在するジレンマと対峙していたのだと言えましょう。
只今のRIは、世界有数のボランティア団体を目指し、DLPやCLPの導入を推奨しております。しかしその方向性に対しては、ロータリーの根幹を成すべき職業倫理を軽んじているとの批判を間々耳に致します。他方、実践派からは、理念にのみ拘泥されるスタンスは、もはや世界の潮流に逆行し、頑なな姿勢はロータリーの衰退に繋がるとの批判もあるようです。
2016年に行われた規定審議会による改変も、批判の対象として意識されております。2002-03年度RI会長であったビチャイ・ラタクル氏は、2016年4月に2830地区で行われた記念講演において、会員資格や出席に関する改変を例示した上で、「ロータリーは今や存続か否かの岐路にある」とまで言及し、危機感をあらわにしております(Back to Basics, 山崎淳一監修、2016年4月23日発行、参照)。しかし一方では、2016-17年RI会長であったジョン・ジャーム氏は、規定審議会による改変は、クラブの運営方法に柔軟性を認めたものであり、ロータリーの目的(綱領)や中核的価値観は一切変わっておらず、ロータリーの本質には全くの変質はないと述べております(2016年12月名古屋での情報研究会講演)。
これら、見解やスタンスの相違をどう咀嚼し、どう解釈したら良いのか。結論から申すなら、私はこの事自体が、ロータリーの健全さを端的に示す証左であると考えます。いずれのスタンスも、共にロータリーに対する真摯の結果であり、健全な自己批判の表出である。更に私見を加えるなら、この二者は決して択一でなく共存できる。理念を掲げ、実践を示すことは、ロータリーを有意義ならしめる事こそあれ、名誉を損なうものではない。理念は実践を否定せず、実践は理念を否定しない。私は、そのように考えます。